4月から、6年ぶりに、以前も働いていた部署で働いている。
ポジションは変わったものの、座る座席が当時と同じ位置ということもあり、何かと当時の記憶が蘇る。
メンバーもちがう。
でも、同じ顔ぶれもいる。
それぞれの立ち位置が変化しているのがこれまたおもしろい。
ひとつの職場に長く勤めるという経験がほぼなかったので、
「ああこれが、長く勤めるということなんだなあ」
と、しみじみする。
13年前、派遣職員として勤めはじめたこの職場に、
まさかこんなに長く勤めているなんて、
しかも、キャリアアップまでするなんて、
当時は想像すらできなかった。
自分は、正職員の人たちとは、違う世界を生きているんだと思っていた。
「この人たちは、いいなあ」
そんな風にいつも、指をくわえて眺めていた。
こちらは交通費すらもらえずに、時給でコツコツ働いているというのに、
正職員の人たちは、たくさんの福利厚生を受けている。
私は0歳の子どもを保育園に預けて必死で働いているけど、
同じ月齢の子どもがいる正職員の人は優雅に育休を取得し、赤ちゃんを連れて職場に遊びにくる。
なんでこんなにもちがうんだろう。
比較しては落ち込んでいた。
あくまで「事務補助」の派遣職員。
募集要綱では、建築の知識は特に求められていなかったけど、
自分が持っている知識を活かせるところで活かしつつ、コツコツ働いてきた。
書類をスキャンしながら、この職場での仕事を、こっそり吸収していった。
たとえば、
「計画通知(確認申請)」の書類はどんな構成になっているかとか、
どんな図面が添付されているかとか、
なぜこの図面が添付されているのかとか、
そういうのを事細かに観察しつづけたのだ。
そんなこと、だれも望んでなかった(期待してなかった)と思うけど、
私はただ自分自身のために、それをしていた。
この職場以外の場所で建築の仕事を続けていくときにも、
きっとこの知識は役に立つと思って、
きっとこの知識を役立たせてみせると思って、
そうしていた。
「転んでもただでは起きない」
べつに私は転んだわけじゃないけど、
そんな意気込みだった。
いや、
当時の私は、
自分は「転んだ」と、
自分は「人生をしくじった」と、
思っていたかもしれない。
そして、
ひそかに「チャンス」を狙っていた。
「チャンス」が来たら、迷わず掴もう、と。
でも、
天からの「チャンス」って、
必ず「お試し」とセットでやってくるんだなあと感じる。
派遣職員から直接雇用の非常勤職員に変わるチャンスも、
非常勤職員から正職員に変わるチャンスも、
上位職への登用のチャンスも、
毎回毎回、「迷わず」とはいかない状況で訪れた。
「挑戦してみたい。でも、、、」
そんな風に躊躇する要因が、必ずあった。
「やったー!チャンス到来!!」
と飛びつける状況ではなかった。
それは、まるで、
私の本気度を確かめるかのように。
「チャンス」は、必ず「迷い」とセットで訪れるのかもしれない。
そこで「迷い」を吹っ切り、
「チャンス」に手を伸ばせるか。
天はそれを試してくる。
「チャンス」に手を伸ばすのは、
恐怖を伴うことかもしれない。
でも、手を伸ばした先でしか、
見れない景色がある。
そして、「チャンス」は奇跡ではない。
毎日のコツコツとした積み重ねが、
「チャンス」を呼び寄せるのだ。